13 好きでした、さようなら

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「き……すき、すきっ」 曇った視界が一気にどしゃ降りになって、豪雨のごとく、涙と思いが溢れ出た。 ひた隠しにしてきたはずの本音だった。 蠢いていた桐原の指が動きを止めた。だけど、どんな顔をしているかはわからない。 ただ、長い長い沈黙は、桐原のシラけた思いを代弁するように思えた。 こんな不恰好な形で思いを告げてしまったのは想定外だったけれど、どちらにせよその覚悟で来たのだからこれでいい。そう思うのに、嗚咽が漏れるのを止められない。 だが、桐原にとっては違うのだろう。こんなことを言われて冷めただけでなく、怒りまで買ってしまったらしい。 下着の中にあった手はそこから出て行ったのに、両手を押さえつける頭上の手には、さっきより強い力が込められたような気がする。 やはり、反抗すればこそ手懐けたいと燃えるタイプの男に言っていいセリフではなかった。 何も言わず、何も求めずに強がっていられたのなら、もう少しだけ桐原の腕の中にいられたかもしれないのに。 そんな後悔で絶望に襲われて悲しいはずなのに、なぜだか胸中に渦巻いていた濁りは濾過され、透きとおっていくような心地がするのだからおかしい。 けれど、望まれてはいない。そんな、恋だの愛だのグズグズ言う女は、桐原のような男にとっては面倒でしかないはずだ。 帰ろう。帰って、一人になっていっぱい泣こう。それで来週からは、ただの上司と部下に戻ればいい。 宮野君にもはっきり言おう。思いには応えられないと。
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