13 好きでした、さようなら

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ぐっと強い力で腕を引かれ、転ぶことしか予測できないほど傾いた体は、桐原の腕に支えられていた。 支えるというよりがっちり固定された状態であるのに戸惑う間も無く、キスが一つ落ちてくる。 困惑に困惑を塗り重ねられ、わけがわからない。 「無駄に逃げ回りやがってっ」 そう言った桐原の声に切羽詰ったものを感じて、余計に混乱する。 呆気に取られていると、突然膝裏を掬い上げられた。 「きゃっ!」 落ちたくない一心で胸元にしがみつけば、くるりと向きを変え歩き出してしまう。 何が起きたのか咄嗟に考えた結果、最後にもう一度するか、私の言ったことなんて受け入れられるはずもないかの、どちらかしかないと答えが出た。 どんどん歩いて行く桐原は、迷いなく進んで行く。そうして一番奥の部屋に着いたのだろう。そこでピタリと立ち止まると、器用にドアを開けた。 入室し、くるりと向きを変えられて視界に入ったのは、ベッド。 やはり、と的中した予想から、放り出されるのを覚悟して体を固くしていたのに、そっと横たえられるからまたまた困惑は増大した。 「なにっ、なんなんですか?!」 「俺を選んだんだろ、大人しくしろ」 強引に運ばれたというのに、いつになく扱いが丁重でかえってパニック。 それに、選んだとはどういうことだ。私は別れの言葉を告げたはずなのに。 ただ、結局もう一度抱かれるしかないのか、と思った。 俺様ドSで絶倫の桐原ならありそうだ。上から跨られたら、尚のことそう思えた。 勝手に終わりを決めたことで怒りを買って、セフレとして離してもらえないパターンもあるかもしれない。 ああ、この先一生、桐原のものとして密やかな失恋と共に生きるのが私の人生なのか。 だが、それならこの失恋から立ち直ることも不要なわけで、桐原のくれる苦い愛を享受し続けるのも悪くないかもしれない、なんて哀愁浸りな思考で眉根を寄せ、唇を噛んだ。
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