13 好きでした、さようなら

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「あの、俺の女とかじゃなくて、さっきみたいに言ってくれましたっけ」 ベッドの上で向かい合って紡ぐのに相応しい言葉とは思えないが、記憶にないのだから訊く他ない。 「本当に覚えてないのか」 「ほ、本当に言いました?」 目を覗き込まれたら動揺しないでもなかったが、逆に桐原の目を覗き込んで言い返した。 「ペットボトルは、案外いいらしいな」 「っ!」 忘れて欲しかった変態プレイを掘り起こされ、言葉を失した。だが、その行為中に言ったのだと、そう言いたいのは伝わってくる。 でも、そんなこと言われただろうか。 自分でも振り返らねばならない状況に転じてしまい悶える。せっかく言い返せたというのに敗北感が尋常じゃない。 とは言え、仕方ないのでよくよく思い起こしてみれば、あの時、そう囁かれたような気もしてきた。けれど、情事の最中で言われた言葉を鵜呑みにするのは危険だと、気に留めないようにしたのだったか。 どちらにせよはっきりとは思い出せない。 そんなことを脳内再生してしまったせいで顔が熱くなった。 「どのタイミングで言ったか、細かく説明してやろうか」 「しないでください」 言われなくとも既に思い出しているだろうことなんか、この赤くなった顔を見たらわかるくせに。 桐原の口元が満足そうな弧を描いているのは、絶対そのせいだ。余計に恥ずかしい。 まあ、それはさて置き、あんな時に言われた言葉を真に受けるなんてできっこないと、そうは思わないのだろうか。それこそ誰にでも言っているのかと思ったんだから。
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