13 好きでした、さようなら

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「あんな時に言われても、普通信じられるわけないと思いますよ?」 羞恥で声が震えないようにと思えば、少しばかり不貞腐れた調子になった。 「好きなら全部信じとけ。俺の言葉は絶対だ」 「じゃあ素直に聞くから、もう一回言って」 お願い、と懇願に熱い視線を添えて訴えれば、眉間に縦皺を寄せた渋面に睨まれた。 どっちが狡いんだ、なんてぼやきつつ腰を抱いてくる。 胡座をかいた膝の上に座らされた私は、桐原の顔を見下ろした。 ふしだらな有り様で、じっと見つめ合う。 閉め切ったブラインドの隙間から微かな日差しが入り込んでいて、この部屋は穏やかにくすんでいる。 桐原の手が、私の腰をぎゅっと、一層強く抱いた。 「真尋……」 見つめ合って静かに名前を呼ばれただけで、その響きの中に溶けてしまいそう。 「好きだ」 抱かれた腰の辺りからぞくっと背中を這い上ったのは、軽蔑の悪寒なんかじゃなかった。 歓喜が脳天まで突き抜けて、シャワーとなって降り注いでくるようだ。 「嬉しいっ」 堪らず首に腕を回して桐原の頭を抱え、胸に押し付けるように抱きしめた。 「嬉しい」 しっかり伝えたくて、もう一度同じことを繰り返す。そうして、もらったのと同じ言葉を返した。 背中を抱く腕の力強さが、強張った心を解してくれる。 が、やはりあのことはどうしても気になる。
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