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完全に被り物を脱いだ状態のところにいきなり現れられて、被り直す間もなく中身を見られてしまった感がある。それを隠そうと慌てて頭に乗っけても、被り物だったとバレてしまった後では何の意味もなさい。
要するに、咄嗟にうまく取り繕えなかったわけだ。
まさかホテルに誘われるとは思いもしなかったが、それを拒否しなかった自分の行動だって、思いもよらないことだった。
二十代も終わりだと言うのに、ちっとも自分をコントロールできないのかと落胆する他ない。
だが、いつからか溜め込んでいたストレスを発散できたことだけは、唯一挙げられる成果のようにも思えた。
それを思うとお腹の奥がずくんと反応するからそんな自分に幻滅するのだが、今そんな反応を示しているのも、その反応を示すような行動を取ったのも自分だと思えば、幻滅するのも馬鹿馬鹿しくなった。
玄関の鍵を締め、踵を合わせてサンダルを脱ぎ、キッチンへ向かう。
抱えていたリンゴジュースの紙パックを狭いワークトップにどんと置いて手を洗い、振り返ったところにある食器棚からガラスのコップを取り出した。
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