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部長は確か、私より四つ上の三十三歳。大人だから面倒な事は言わないだろうと括ったタカは、大ハズレだった。
そんな桐原に言われた面倒なセリフを思い出し、またも溜め息が零れる。
俺の女になれ。部長命令だ——。
そんな命令聞けるか。
俺の女、をどういう意味合いで言ったのかは知らないが、彼女だとしてもセフレだとしても歓迎致しかねる。
始まったものはいつか終わる。
そうして立ち直る時はいつも、一人だ。
この歳で立ち直るのに割く気力やら労力やらを捻出することを考えると、それだけで頭が痛い。だから、誰かと何かを始まらせる覚悟なんてできるわけない。
終わりのない恋愛などないから。
少なくとも、私の経験上ではそう。
大体、社内恋愛も嫌いなのだ。
別に自分が痛い目を見たことがあるわけじゃないけれど、あれって端から見たらちょっと気を使うし、なんでか要らない想像力を掻き立てられるし、それでいて別れたとなると周辺の空気も微妙になるし、結局自分が一番傷つく。いい事ない。
だからそんなもの、欲しくはない。
そういうのはわかってくれるだろう、なんて思った私が悪かったのか。
いや、部長命令だ、なんて自分の都合のために肩書きを使おうとするあの男が絶対に悪い。
だってこういうのは普通酔った勢いな訳で、なかった事にするのが礼儀ではないか。それがなんでああいう発想になるのだろう。
そりゃあ部長も猫被って正解だわ、なんて思ったら笑えた。
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