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週明けの職場には、何の変化もなかった。それはある意味がっかりするほどに。
いや、何のがっかりよ、と内心で自分に突っ込みつつ、淡々と業務をこなした。
面倒な変化なんて求めていないのだ。私は今までと変わらず、大人しく地味な一社員としてこの職場で働いてお金をもらえたらそれでいい。
桐原部長だって、結局男だったというだけの話だ。
あれで案外酔っていたのかもしれないし、一夜の過ちだったと、アルコールの抜けた頭でならすぐに理解できたのだろう。
そう確信した直後だった。
「紺野さん」
「はい」
呼ばれたのは突然。
桐原のことを考えていたところだったので内心慌てたが、普通のトーンで返事ができたのだからと、何食わぬ顔で振り返る。
「今、ちょっといいかな」
「はい」
全然よろしくないが、微笑は浮かべておく。
呼び出されるようなミスも問題も起こしてはいないはずだ、仕事上では。
それなのに心臓が勘違いしてアップテンポを刻み始めるから、意識して涼しい顔でいなければならないじゃないか。
重い溜め息は心の内側だけに留め、表面的には、普段通りの控えめな笑顔を貼り付けた。
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