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Bar.Vivian——。
ここは、被っていた被り物を完全に脱いでしまったあの日の私が、桐原と出会ったバーだ。
約束の時間より前から一人で待っているなんて、そんな焦がれた少女のような事ができるわけもなく近くのビルでフラフラとウインドーショッピングをしていたのだが、欲しいものは何も見当たらなかった。
結局、上司だからあまり待たせ過ぎるのも良くないか、と十分程度約束の時間を過ぎたのを確認してからバーの前までやって来たが、なぜか呼吸が整わない。
そんなに急いで来たわけでもないのに、歳?
でもまだギリギリ二十代なんだからと心の内で拗ねつつ、軽く髪を整えドアノブに手を掛けた。
この店は女性の名がついているからか一人でも入りやすい。店内に漂う空気に堅苦しさがないのもここが好きな理由だ。
カウンターに目を遣れば、すでにあの男の姿はそこにあった。
近付いて声をかける。
「部長」
振り向いた顔は既に歪んでいた。
だから笑ってしまった。
「こんなとこで部長なんて呼ぶな。名前で呼べ」
不満そうな物言いをしておきながら、バッグを持っていない方の私の手を勝手に持ち上げ弄ぶ。
「桐原さん」
「バカだろお前」
「そっちこそ」
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