#1 告白

1/1
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

#1 告白

「え?今、何て言った?」 放課後。ボクたち以外、誰もいない教室で、 あいつは、緊張した面持ちで、ボクの聞き なれない言葉を言った。 ボクは、訳がわからず問いかけた。 あいつは、一瞬、ひるんだ様子だったが、 もう一度小さな声で、でも、はっきりと こう言った。 「君を好きに、なったんだ。  付き合ってほしい」 んんん??付き合うって? えーと? ボクを、"好き"って、どういう意味? ここは有名な中高一貫の進学校、そして 私立の男子校。 ボクは、あいつの顔をじっと見つめて、 真意を、確かめようとした。 罰ゲーム的な?それにしては・・・ 観衆がいないし、あいつの態度からし て・・ どうやら・・。本気らしい。 ふ・・ん。マジか。 あいつは、赤い顔して、固唾(かたず)をのんで こっちを見ている。 ボクは、焦らす様に長い沈黙を守って、 ようやく口を開いた。 「・・・いいよ。 ・・でも、ボクは、誰のものにもならない から。それでもいいの?」 そう言いながら、相手に向けたあざやかな "つくり笑顔”は、”史上(まれ)なる美少年”と 言われ育った(笑)ボクのお得意の表情だった。 ・・・。 「うん。わかった。ありがとう。」 少しの間をおいて、とても驚いた表情をした 後、ボクの言葉を理解できたのか、思いの外 嬉しそうに頬を上気させ、あいつは(うなず)いた。 単純! いいよ。という言葉しか、君には、 響いてないんだね。 ――誰のものにもならない。 多分、その意味を、こいつは、きっとずっと わからないだろうな。 ボクは、他人事のように思っていた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!