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「うわっ何やこれめっちゃ味濃いやん、ほんまにこれ胃に優しいの?」
「ごめんね、家で料理するんなら素うどん出してあげられるんだけど、急ぎだったから……」
うどんをすする。口の中のものを飲み込んでから溜息をつく。
「どないしよ、迎えが来て連れ戻されたら。母さんのことやし着信拒否されただけでは諦めなさそう」
間髪入れず向日葵が「わたし戦う!」と言うと、椿が「ふふ」と笑った。嬉しかったに違いない。椿が嬉しいなら向日葵も嬉しい。
向日葵に続いて、父も「俺も!」と言い、母が「母さんも!」と宣言した。
「そしたら池谷家一同にも迷惑かかるな、それはそれでおもろいけど」
「性格がゆがんでる」
「すみませんね、これは生まれつきなんですわ」
そしてぽつりと「温かい」と呟く。うどんが、だろう。温かいもので体を温めてくれたらいい。
安心してくれたらいい。池谷家一同は椿が素でしゃべっていても文句を言わない。誰も拒まないのだ。先週の雨の日のようにかしこまった態度を取らなくてもいい。
「うち来る気なったら?」
祖母が尋ねると、椿は頷いた。
「お世話になります」
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