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「――まあ、本当に、いいのよ」
母が穏やかな声で言う。
「うち、そういう家だからさ」
それまでずっと黙っていた祖母が「なつかしいね」と呟いた。
「桂子ちゃんの時もそうだったね。あの時もむちゃくちゃだったけど、おじいちゃんも広樹も落ち着いててさあ」
「一番どっしり構えてたのはおばあちゃんだったわよ。あと一番上のお義姉さん」
おもしろい話になってきた。向日葵は母のこの嫁入り物語が大好きなのだ。少し身を乗り出して「お母さん、お母さんの話椿くんに聞かせてあげてよ」と言うと、母が「よしきた」と答えた。
「実はね、私、秋田の出身なの」
椿が「東北ですか」と尋ねる。母が「そうそう」と頷く。
「すごいド田舎よ。京都とも、沼津とも比べ物にならないくらいの、今風に言うと限界集落ってやつ。村の全員が親戚で、大昔の庄屋さんと小作人の上下関係があって、何もかも筒抜けで、隣組みたいな監視システムがあって――」
「まあそれはうちもそんなもんですけど」
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