第10話 それでもいいということだけは、おぼえておいてね

4/9
前へ
/124ページ
次へ
「でも村全体でも数百人の規模だから本当に入れ替わりがない。みんな村の中で結婚するから血がすごい濃い。しかも子供がぜんぜんいない。私が子供の頃から過疎化が進んでて、私同級生いなかった」  景色が流れていく。 「若い娘の数が限られているから、親族一同が私を集落の中の庄屋さんの息子に嫁がせようとするわけよ。で、あの家のお父さんの機嫌を損ねないようにしなさい、可愛がられなさい、絶対に逆らうんじゃない、村の繁栄のためにたくさん子供を産むように――」  彼女は明るい声で語った。彼女にとっては大昔の過去の話だからだ。 「私の婚約者はなんと二十一個も年上のおっさんで、中学生の頃から、夜這いなり何なりしてわからせるか、嫁入り前の娘に傷をつけないように、結婚式まで傷物にしないように配慮するか、みたいな話をそのおっさんと私の親が話し合ってたのよね。生理が来てすぐ、もう女のからだだからということで。キモくない? 私自分が子供を育ててから同じ年頃のひまを見てまだぜんぜん子供じゃんと思ってぞっとしたわ」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加