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「この旅行が終わったらあのキモいおっさんと結婚しなきゃいけないんだと思ったらどうしても帰りたくなくなって、勢いでその辺でバーベキューしてた若者グループに話しかけたのよ。どなたか独身の男性はいませんか、いたら私と結婚してください、って!」
何度聞いても笑えてくる。
「びっくりしたわよね、東北訛りの女が泣きながら結婚してくれなんて言って近づいてくるなんて。でも広樹さん――お父さんね――すごく冷静で、とりあえず泣き止んで肉を食え、食って冷静になっても同じことを考えちゃうなら俺っち来い、うちなら母親もいるし姉も複数いるから、女性がいるから安心だら、って」
「初対面ですよね?」
「初対面よ。初めて会った女に対してそんなことを。背も高いし、すんごいイケメンに見えた。それで恋に落ちちゃって、私この人と結婚するわ、って決意したわけ」
後ろを向くと、当の本人である父は口を開けて寝ていた。
「それで池谷家に引き取られて。なかなか帰ってこないから実家はカンカンよ。その時の友達を問い詰めて、沼津に置いてきたことを白状させて……四月になってから家に迎えに来て」
「こわっ」
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