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「で、お義母さんとか広樹さんとかが見てる前で私のことを殴って、髪の毛をつかんで引きずって、うちに連れて帰ります、って。そしたら広樹さんが助けてくれて、いやもう俺の嫁なんでだめです、お引き取りください、って。で、うちの親どうしたと思う? 処女じゃなかったら先方さんに失礼だからと言って帰ったの!」
「うわっ、最低」
向日葵は手を叩いて笑った。
「実はその時まだ籍も入れてなかったしお父さんはちゃんと気をつかって部屋を別にしてくれてたんだけど、うちの親はお父さんの一言だけでだめだと思ったみたいなの。私は万歳三唱。これでもうあのド田舎に帰らなくて済む! これであのキモいおっさんと結婚しなくて済む!」
「おめでとうございます」
「その翌月の五月には籍を入れて、それから二十七年一緒に暮らしてる」
「めでたしめでたしやないですか」
「でしょう? あの時千本浜で思い切った若い頃の私を抱き締めてあげたい。あと受け入れてくれたお父さんやおばあちゃんたちも、いくらお礼を言っても言い足りないわ」
祖母も「おもしろかったねえ」と笑う。
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