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「なんと、これがもう平成なのよ。華原朋美とかミスチルとかが出てきた頃」
「めっちゃドラマチック。映画みたいですね」
「小説みたいな生い立ちの椿くんに言われてもなんだかなって感じだけど」
高速道路の緑の標識に沼津の文字が見えてきた。
「でもねえ」
溜息をつく。
「それでも生まれ故郷は生まれ故郷なのよね」
「はあ」
「親兄弟には会いたくないって今も思ってるけど、時々無性に一面の田んぼとか山とか日本海が恋しくなるの。結婚した当初なんかは夜いきなりぼろぼろ泣けてきちゃって。実家には帰りたくないけど秋田には帰りたい、って言ってお父さんを困らせて」
椿が沈黙した。
「でも、それでもいいと思うのよ。それだけは、椿くん、よくおぼえていてね」
彼もいつか京都に帰りたいと言い出すのだろう。しかしそれは自然なことなのだ。
「旅行ぐらい行ったらいいわ。私も子供たちが子供の頃三回お父さんに家族旅行に連れて行ってもらって角館とか男鹿半島とか観光したもの」
そして、「そろそろ沼津ね」と呟く。
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