42人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
LINEの画面を開き、グループをタップする。メンバーを招待にして、椿を選択する。以前は「九条椿」と厳めしい設定だった彼の名前はいつの間にか「つばき」のひらがな三文字に変わっていた。
椿が着物のふところから自分のスマホを取り出した。例の骨董品のiPhoneだ。向こうの家族でドコモに加入していたのをむりやりこちらの家族のAUに変更させて家族割をセットしたやつである。いっそ機種変もさせてしまえばと思ったがそんなに急に全部変えるのも彼に負担をかけるだろう。
椿がスマホを操作する。
『出戻りです。すみません。』
そう送信してから、彼は一人で「ふ」と声を漏らして笑った。
「ほら、これで大学の時のこの面子は友達! 新郎席六人埋まったじゃん」
「ポジティブやなあ」
平日の午後だというのにすぐに反応してきた奴がいる。例の三重の男だ。彼も地元に帰って真珠貝の世話をしているはずだが暇なのだろうか。
驚いた顔のキャラクターのスタンプが三連続で送られてくる。そして慌てたような短文が続く。
『待って』
『つばきってあのつばき?』
『九条椿さん?』
最初のコメントを投稿しよう!