隕石が落下する少し前の話

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今から6600万年前、隕石の落下が原因で恐竜が絶滅したと言われているのが 一番有力な説だと言われている。 これは恐竜が滅亡する前日の出来事を描いた物語である。 PM11:00 「ルコアちゃん、もう一杯、ちょーだい」 「もう、飲みすぎよ、ティラノくん。 このいっぱいで最後ね、明日も仕事あるでしょ。」 とくとくとく、お酒をまんべんなくグラスに注ぐ。 「あー、仕事行きたくないよ、ここ最近数字が伸びないしさ」 「ギガント商社の星とか言われてた君がかい?まぁあの頃は若かったしな 俺も相変わらず倉庫で働いているけど、重い荷物が運べないのよ」 ティラノの隣で飲んでいるのは友人のスピノだ。 彼らは高校生からの長い付き合いだ。 金曜日の仕事終わりで必ずここの「スナック・ルコア」で二匹で飲みに行くほど仲がいい。 「それは、時代も時代だよ、営業は足!って言われていた頃だから 俺はとにかく数を稼ぐためにそこら中走り回って営業してたもん、それは何件か通るもんは通るよ」 ティラノは酒をぐびっと飲み干す。 「ルコアちゃん、水頂戴」 「スピノは飲まないのか、今日は全然飲んでないじゃないか。」 「いや、明日は仕事入って今日は軽く飲み(汗)」 この店に入ってから二時間程度経ったが、スピノは二杯目に入ったばかりである。 「仕事なんか、いいよな。お前の仕事は楽そうで荷物を運ぶだけで給料もらえるもんな―」 その発言にスピノはカチンときた。 「じゃあさ、聞くけどよ、同じ仕事を何時間もお前にはできるのか?荷物を段ボールに積んで翼竜たちに運ばせる。たしかに楽な仕事だが朝から晩まで休みなしだぞ 精神が崩壊しそうだよ、俺だって外回りの途中で飯とか食ってみたいわ あーー、いいよな、会社員はよーー」 その発言でティラノの方もカチンときた。 喉に水を一気に流し込む 「外回りをなめてんじゃねーぞ、確かに昼休みに外食とか行くけど、毎日毎日部長から電話がくるんだよ。順調か?契約は取れそうか?こっちは貴重な休みの時だぜ。しかも目の前には食事がある。その食事がまずくなるんだよ。こんな経験したいか? その代わりにお前は恐竜関係とかなくて楽そうだけどな」 「あん?そんな考え方だから新入社員のアロサウルス君に数字負けるんだろ? あの子は今ギガント商社の超新星だとか言われているらしいな ルックスもイケてるし、頭も良い。お前の時は星か(笑) 星といえども隕石みたいに落下する。ギガント商社の隕石って呼んでやるよ。」 「っけ、輝いた時期なんてなかったお前がよく言うぜ、なんだ、昔は力持ちでしたのでプテラ流通センターの縁の下の力持ちとか呼ばれてましたか?呼ばれてないよな!(笑) 底辺収入者は黙っとけこの野郎。」 口喧嘩が始まった。二匹は昔からこの場所に集まると口喧嘩をするのだ。 ルコアは「またか。」と溜息を吐きながら見ていたが若いころでも二匹がここで口喧嘩をしている描写を思い出した。 「あんたらは変わらないね。一番老いたのは私だよ」 二人の口喧嘩は閉店準備が始まるPM12時00分まで続いた。 お会計をして店を出るもまだ二匹は睨み合っていた。 「ああーー、今流れ星が流れたら ティラノが人生どん底に落ちますようにと祈ってやるよ 感謝しろ。」 「こちらこそ、今流れ星が流れたら 同じ願い事してやるよ」 そしてその言葉が叶ったかのように空から流れ星が流れた。 最初に気づいたのはティラノだった。 「おい!流れ星だ!見て見ろよ、、」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 激しい光と恐ろしい速さで熱風が襲いかかってきた。 隕石が地球上に衝突したのだ。 全世界の恐竜が絶滅し、恐竜たちが作り上げた文明も全て滅んだ。 そのおよそ6000万年後、人間という新たな分類の種族が生まれた。 その人間が文明を作り上げるのはまだ先の話。
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