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今となってはもう、あの時に妻が何を言おうとしたのか知る由もない。
目の前の祭壇に飾られた写真を見上げれば、眩しいほどの笑顔で彼女がこちらを見ている。
今、私の手の中にある妻の携帯電話は、事故の衝撃で電源すら入らない。
どちらにせよ、妻がこの携帯を使うことはもうないのだけれど。
視界に紗がかかって、頬を熱いものが伝う。
ぽたぽたと畳の上に涙が落ちた時、私はおもむろにポケットから自分の携帯電話を取り出した。
メールアプリを起動して、妻のアドレスを表示する。
件名は空白のまま、本文を直接打ち込んだ。
『あなたは今、どこにいますか?』──
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