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「じゃあ、歌うね。
この前ね、テレビで『レベッカ』が出てたの。
『NOKKO』さんが歌って踊ってた。かっこよかったなあ。
ちょっとまねしてやってみるね」
「やったー! 」
葵ちゃんは、拍手をしてくれた。
いじめられてから歌を歌うのが嫌になってたけれど、葵ちゃんのためなら心を込めて歌うよ。
踊りだって、はじけて踊るよ!
『76th Star』を歌った後、『フレンズ』を歌った。
葵ちゃんは、とっても喜んでくれた。
「すごーい! 緑ちゃん『NOKKO』さんみたい。ダンスも上手!
ありがとう元気がでてきたよ」
「えへ、そうだった。ありがとう。
そう言ってくれるのは、じいちゃんとばあちゃんと葵ちゃんだけだ。
父さんと母さんと兄ちゃんは、それがどうしたって感じだもんね」
「緑ちゃん」
「え? 何改まって……」
「緑ちゃんの歌を上手だって言ってくれる人はかならずいるからね。
その人のことは信じてあげてね。
きっと緑ちゃんのいいお友だちになってくれるよ。
緑ちゃんの歌が上手だと言ってくれる人はみんなみんな緑ちゃんのお友だちだよ。
これからも歌い続けてみんなを元気にしてね。」
「うん。でも、何でそんなこと言うの? 」
「はっきりと説明できないけど、そうね……緑ちゃんの歌は、心に響いてくるの。
いつまでも聞いていたい歌声なの。自信をもって! 」
「わかった。自分のためにも葵ちゃんのためにも他のみんなのためにも歌うよ」
わたしは、車椅子の後ろから葵ちゃんに抱き着いてほっぺたを合わせた。
「葵ちゃんもお医者さんになってね」
「うん。なんでも直すお医者さんになるよ」
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