『中学生、緑と葵の物語』

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 月曜日、葵ちゃんは学校に来なかった。  わたしのクラスの先生は、昨日葵ちゃんが事故に遭って重体(じゅうたい)であることをみんなに話した。  ざわつくクラスの中で、わたしはまた涙が出て来た。  中学校で一番最初のお友だち。  そして一番大好きなお友だち、葵ちゃん。 「葵ちゃんがいたから、わたしここまでがんばれたんだよ」  葵ちゃんがいなかったら、絶対わたし学校を()めちゃってた。  入学当初は、葵ちゃんと言葉を交わすなかでもなく、お互い座席も離れていた。  お互い違う小学校だったからなんだ。  葵ちゃんが友だちになってくれたのは、わたしがいじめに()い出してからだった。  わたしがいじめられだしたのは、1年生の時。  12月のお楽しみ会の後ぐらいからだった。  お楽しみ会では、クラスメイトがグループを作って出し物をした。  わたしのグループは、歌を歌った。  歌ったのは『美少女戦士セーラームーン』の『ムーンライト伝説』だった。  わたしは歌うのが大好きで、じいじとばあばによく『緑ちゃんは歌が上手だねえ』とよく()められた。  だから、その時も精一杯歌った。  これが良くなかったみたい。  グループの中でわたしだけが目立ってしまったんだ。  聞いているだけのクラスメイトは喜んでくれた。  だけど、一所に歌ったグループの友だちはわたしが目立ったのが面白くなかったみたいだった。  それ以降わたしだけ仲間はずれにされるようになった。  よく、『そりゃあなたは私たちとちがって、歌が上手だものね』といわれてのけ者にされた。
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