『中学生、緑と葵の物語』

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 始めは、グループの子たちだけだったけど、いつしか他の子も、わたしに嫌味(いやみ)を言って()けるようになった。  なんで? 大好きな歌を歌っただけなのに。  本当に悲しかった。  だれもまともにわたしと話してくれなくなった。 「もういい、歌も嫌い。もう歌わない。私なんて嫌い」  ホントに私は自分が嫌いになって学校にも行かない日が増えて来た。  そんな時だった。わたしの歌が本当に好きだって言ってくれる子がいた。  それが吉川葵ちゃんだった。  みんながわたしを避けて嫌がらせをする中で、葵ちゃんだけは違ってた。  一緒に家に帰る途中、葵ちゃんは言った。 「みんな、緑ちゃんが(うらや)ましいんだよ。  嫉妬(しっと)っていうのかな。  自分より優れた人が羨ましくなって憎たらしくなるのよ。  素直じゃないよね」 「わたしは、歌が上手(うま)いってことで憎まれているの?  そんなに上手くないのに……」 「そんなことないよ。緑ちゃんは本当に歌が上手。  それは、私が保証するよ。  私は自分の歌と緑ちゃんの歌を(くら)べないし、私は自分の歌う下手(へた)な歌が好き。  ただ上手な緑ちゃんの歌を聞きたいだけ。  緑ちゃんをいじめる人なんてほっときなよ。  私は、緑ちゃんの歌が好きだよ。  ずっと友だちでいよう」 「ありがとう。そう言ってくれるのは葵ちゃんだけだ。  でも、わたしと一緒にいると葵ちゃんもいじめられる」 「緑ちゃんは私のことをいじめる? 」 「そんなことしないよ」 「じゃあ私と緑ちゃんがいつも友だちでいればいいじゃない」
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