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「葵ちゃんて強いね」
「別にそんなことないよ。本当のことを言ってるだけ。
きれいなものはきれい。
上手な歌は上手。
それだけだよ。
それに緑ちゃんのことをわかってくれる人は絶対いるから。
まず第1号を私にしてね」
「わかった。わたし、葵ちゃんのために歌うよ」
「ありがとう。今度、私の好きな歌を歌ってくれる? 」
「もちろん。歌う歌う。葵ちゃんの好きな歌って何? 」
「あのね。『レベッカ』っていうグループが歌ってる歌がとってもいいの。
ドラマの歌なんだけど緑ちゃんも気にいると思うよ」
「へえー。聞きたいなあ」
「今度家においでよ。お姉ちゃんがレコードを持ってるんだ。一緒に聞こう」
「え、いいの。絶対行くよ。歌も覚えるよ」
こうして、葵ちゃんはそれからもずっと友だちでいてくれた。
葵ちゃんもわたしと仲良しになったことで、仲間外れや意地悪されたけど、気にせず普通にしていた。
葵ちゃんに対するいじめは、すぐになくなった。
そのうち、葵ちゃんだけでなくわたしに対するいじめもなくなってきた。
葵ちゃんは、前向きで本当に強い意志を持っているようだった。
ある日わたしは、教室で葵ちゃんに聞いてみた。
「葵ちゃんは、いつも前向きだよね。何か目標があるの?」
「うん。夢があるの。夢と言うかやっぱり緑ちゃんの言う目標かな。
私ね、お医者さんになりたいの」
「え、すごい。お医者さんになってよ。
わたし、病気になったら葵ちゃんに見てもらいたいな」
「うん。いいよ。ホントはね、大好きなおばあちゃんがいたんだけど、体が弱くてね。よく病気をしてたの。
その時から、私がお医者になっておばあちゃんを直してあげたいって思い始めたの。
おばあちゃんはもう死んじゃったけどね」
「そうなんだ。でも、目標があると人は強くなれるのかなあ」
「さあね。緑ちゃんの夢とか目標とかはあるの? 」
「うーん。まだわかんないな」
「そのうちにわかる日が来るよ。その時は、教えてね」
「うん。いいよ。一番に教えるから」
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