6人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは、病院に走っていった。
面会をしてもいいと言われていたので、病室の前で呼吸を整えて、ドアを開けた。
葵ちゃんは、ベッドで上半身だけ起こして座っていた。
そして、わたしに気付いてニコリと笑った。
「緑ちゃん、来てくれたのね。ありがとう」
葵ちゃんの声だ。
葵ちゃんが普通にしゃべった。
私は葵ちゃんの手を握った。
また、なみだがボロボロ出て来た。
「葵ちゃん、よかった。目が覚めたのね」
「うん。ずっと、意識がなかったってお医者さんから聞いた。
今日はもう1月の終わりなのね。
事故に遭ったのが昨日みたい」
ベッドの傍に座っていた葵ちゃんのお母さんが言った。
「葵、緑ちゃんはそうやって、毎日あなたの手を握ってくれていたのよ」
「え? 毎日? 緑ちゃんが来てくれていたの」
そう言いながら、涙など見せたことのない葵ちゃんが、泣きながらわたしに抱き着いた。
「ありがとう。緑ちゃん。心配かけてごめんね」
「あやまることなんて、何もないよ。
わたしは、葵ちゃんに会えるだけで嬉しいし。
葵ちゃんの寝顔かわいかったよ」
「そう。これから、高校受験だね。
一緒に勉強してね。
それとまた今度、緑ちゃんの歌を聞かせてね」
「うん。病室で歌ったら怒られるから、外に出られるようになったら歌うね」
最初のコメントを投稿しよう!