『中学生、緑と葵の物語』

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 それからも(しばら)く、葵ちゃんの入院は続いた。  でも最近は、車椅子で外に出てもいいことになったんだ。    今日は、車椅子で出られる日だった。  わたしと葵ちゃん2人で外に行っていいと言われたので、わたしが車椅子を押して病院の庭に出た。  人気の少ない広場のような所へ来たときに、葵ちゃんがわたしの顔を見て言った。 「この前、緑ちゃんの歌を聞かせてねって言ったこと覚えてる? 」 「うん。そういえば外に出られるようになったら歌うねって言った」 「いま、歌ってくれる? 」 「ええ? ここで? いあや、恥ずかしいなあ……」 「お願い。今のうちに聞いておきたいの」 「葵ちゃん変な言い方しないでよ。  わかった。歌うよ。  私が好きな歌がいい? それともリクエストある? 」 「うん。私のリクエスト、『レベッカ』の『76th Star』って歌。  とっても元気になるんだ。  お願い歌って。  その後、緑ちゃんの好きな歌も歌ってよ」 「わかった。その歌覚えたよ。私も大好き。  でも『76th』ってなんのこと? 」 「それはね、76年に一度地球に接近するハレー彗星のことなの」 「ふーん。ハレー彗星がナンバーワンの星ってことね」 「そう! 私は、すい星のように(きら)めくのよって歌」
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