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「おはよう、篠原さん。毎朝言ってるんだけど、その、“王子”って呼ぶのやめてくれない?」
航くんはこの学校の王子様なのだ。
入学した当時から同級生にも先輩にも大人気で、女子たちの間で「白馬に乗った王子様」みたいと多大な人気を得て。
でも、“王子様”と呼ばれることに、航くんはとても抵抗があるみたい。
この風貌なら、今までも呼ばれたことがあるだろうに。
「いいじゃん。ほかのみんなも王子って言ってるんだし」
「………でも、直接言われるのはちょっと」
「あ、そうだ!羽美!」
航くんの話を遮るように、あたしの名を呼ぶ楓。
一瞬だけ航くんと目が合ったのだけれど、あきらめたように小さく笑って自分の席に戻っていった。
「どうしたの?楓」
「今日、大海(ひろみ)先輩って朝出たの早かった?」
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