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「お疲れー!あ、何?付き合うことになったのかい?」
加藤さんと私が店に入るのを見て、店主がからかって声をかける。
加藤さんには秘密にしていたが、実はあの告白の後、私も一人でこの居酒屋に通って『行きつけ』にしていた。
店主には沢山話を聞いて貰ったので、あんなことがあった後のツーショットでも、気軽に声をかけてくれたのだと思う。
「………そうなるかもしれない人。おっちゃん、取り敢えず、生二つ」
えっ、と目を丸めて加藤さんを見たが、狭い入り口に加藤さんが先に暖簾を潜ったので、私からは加藤さんの後ろ姿しか見えない。
ねぇ、今、どんな顔をしているの?
「ははっ!良かったな、山梨ちゃん!」
おっちゃんの気前のいい、明るい声がカウンターから覗く。
「あ、あのっ、加藤さん……!」
私はなんといっていいかもわからないままに、彼の名前を呼んだ。
「……………来年も、とびっきり甘い、ミルクチョコレート………くれるんだろ?」
少しだけ振り向いて、顔を真っ赤にして言う加藤さんが、やっぱり可愛くて。
「……………勿論です!」
私は少し、泣いてしまった。
ーおしまいー
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