年上の貴方に、飛びっきり甘いミルクチョコレート

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次の日。 どんな顔をして話せば良いんだ。会えば良いんだ。いっそ…休んでしまいたい…。 そんなことをぐるぐると考えて、あんまり眠れなかったと言うのに。 当の加藤さんはケロッとした顔をして、私にいつもと変わらない挨拶をした。 「山梨さん、おはよう」 「……………おはようございます…」 あれ?昨日のことってもしかして夢だったのかな…? 「…昨日は、ちゃんと無事に帰れたか?」 「…ああ、はい。すみません。ありがとうございました。ご馳走様でした…」 夢じゃない。 と、なると、はぐらかされているのか?本気にされていないのか?私は、じわじわと自分の中で沸き上がる怒りを感じた。 「あのっ!」 流石に、昨日のような沈黙を職場で起こすのは気まず過ぎて退職願いを書く未来が見えたので、加藤さんが出荷業務の為に倉庫に籠ったところを襲撃することにした。 「ん?どうした?」 何食わぬ顔で訊く。 作業する手を止めてくれるところには、きゅんとしながらも。 私は、「私、怒ってます!」という態度を崩さずに、言おう言おうと思っていた言葉を告げる。 「私、本気ですから…!」 「………」 「本当の本当に、好きなんです!」 「……」 加藤さんは困った顔をして、うーん、と唸った。 「……俺さぁ、五十四歳なんだよね」 「知ってます」 「……大学生の息子が居てさ、」 「知ってます」 「………結婚経験、あるんだよね…」 「それが、どうかしましたか?」 私の意思の籠った目を見て、加藤さんはとても驚いた顔をした。 「気持ちは、」 「先程のことを断る為の理由にするのなら、納得行きません。もっと真剣に、私のことを考えて下さい」 気持ちは嬉しいけど、なんて枕詞で、この告白を拒絶させたりなんてしてやらないぞ!と思った。 私は、意外と打たれ強い。 生粋の、オジ専なのだ。 舐めるなよ。 今までの恋愛遍歴は、ちょっとやそっとじゃ語れない。私は、見た目に反して逞しいのだ。 「……」 遂に、困って後ろ手で頭を掻いた。 加藤さんを困らせたいわけではなかったが、私のことを考えているせいだと思えば、やっぱり嬉しい。 ごめんなさい、こんなめんどくさい女が、貴方を好きになって。 「………年の差なんて。大したことでは無いです。恋愛って、感情でするもんじゃないですか?…私、加藤さんの傍に居たいなぁと思ったんです。出勤前も。退勤後も。休日も…」 「……」 「……好きなんです…」 「……はぁ、」 溜め息を吐かれて、流石に少し、傷付くところがあった。でも、めげない。折れない。諦めない。 「……十二日、本命チョコを渡すので。受け取れないと思ったら、断って下さい」 私はそう言い残し、倉庫を後にした。
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