バトン

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 そして、練習を重ねて、僕らは再び大会に出場した。  結果自体はそれほど良いものではなかったが、その時の大会で得た感覚を今でも忘れられない。  最高速を維持したままバトンがつながれていく感覚――それはまるで、チーム全体が一人の人間になってトラック一周を全力で駆けているようだった。  濃縮された一分にも満たない時間の中に四人の全力が反映される。  僕はこの時初めて、陸上競技でチームを意識した。  僕らはこの大会以降も四人でリレーを組むようになり、失敗と改善を繰り返して少しずつよいものへと仕上がっていった。  リレーの練習以外にも走り込みやドリルなども欠かさなかった。  厳しい走り込みのせいで、夏場の練習は吐いてしまうこともあった。  それでも、足が重く動かないくらい走りこんだとしても、走り続けて限界を超えていかなければならなかった。  練習の途中で弱音が出ることもしばしばあったが、僕らは互いに声を掛け合って成長していった。  僕ら四人は共に過酷な練習を乗り越えていくことで、絆が深くなっていったように感じる。  また、部活の合間や日々の学校生活でも四人でいることが増えていった。
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