バトン

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 こんなこともあった。  全国出場が決まった日のことだ。  全国に出場できたことが嬉しく、僕はきっかけをくれた智樹に感謝を伝えた。 「お前がいたからリレーを続けて、全国まで進めた。お前があの時リレーをやろうって引き留めてくれなかったら、リレーやめてた。もしかしたら、高校では陸上もやってなかったかもしれない。ありがとう」  智樹は僕の急な発言に照れくさそうに笑って言った。 「俺も、皆がいたから陸上を続けられた。一緒にリレーで走ってくれてありがとう。四人でここまで来れてよかった」  その言葉に感化されたのか、裕司が涙を流していた。 「俺も……よかった。ありがとう……ありがとう……」  泣きじゃくりながら裕司がそう言うと、圭太も泣き出したんだったな。  もう四年以上前のことなのに、つい最近のことのように覚えている。中学、高校と四人で過ごせてよかった。  僕らは高校を卒業してからも帰省した度に会って、遊んだりもした。今も帰省していることだし、智樹とかに連絡とって遊ばないと。  あっ……智樹いないんだった……。
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