バトン

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 新幹線が目的地に着き、僕は一度実家へ寄って喪服に着替えた。  そして、圭太、裕司と合流した。 「二人とも久しぶり。元気そうだね」 「まあまあかな。お前も元気そうじゃん」  圭太、裕司とは半年ぶりくらいに再会した。二人とも元気そうだった。  僕はそのまま圭太の車に乗り、通夜の会場へと向かった。 「智樹、亡くなったって聞いたけど、何があったの?」  僕の問いに圭太が答えた。 「わからない。事故とだけしか知らない。聞いた話によると、頭を強く打ったらしい」 「そうなんだ……」 「あのさ、言いにくいんだけど……智樹が亡くなったって実感が湧かないんだよね。喪服を着て、こんな感じだけど、まだ何が何だかわかってないというか……。二人はどうなの?」 「俺もそんな感じだ。よくわかってない。裕司は?」 「俺も同じ、急すぎて……。でも、なんとなく違和感はある。俺ら三人が揃った時は智樹も一緒にいることが多かったから、この車に智樹が乗っていないのが変な感じ」 「そうだよね」  久しぶりの再会だというのに空気が重たいまま会場に着いた。  入口の自動ドアが開くと、ドアの右の方で智樹の両親が参列者に挨拶をしていた。 「この度はご愁傷様です」 「あら、三人とも久しぶりね。しばらく見ないうちに大きくなって……」  智樹の母親の目元には(くま)ができており、酷く疲れている様子だった。 「三人とも、智樹のためにありがとうね。きっと智樹も喜ぶわ」  僕らはその後、焼香をあげにいった。  その時、智樹の遺影が目に入った。  高校の頃の写真が使われており、写真の中の智樹は満面の笑みを浮かべている。  智樹の遺影を見て、現実のことなのだと認識してきた。  本当に死んでしまったんだな……もう、お前とは会えないのか。  ウイルスの影響で通夜は簡易的なものだった。  焼香の後は、受付で香典を渡し、智樹の両親に挨拶をしてから帰宅した。  普段なら集まった後に皆でご飯とかに行っていたのだろうな――そう思うと胸が苦しくなった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加