オオカミ令嬢は浮気(※誤解)を許さない

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オオカミ令嬢は浮気(※誤解)を許さない

 ひとくくりに『貴族』と呼ばれる者たちの中でも、いわゆる『高位』『下位』の区別は存在する。  王族との婚姻にのみ目を向ける下位貴族は、その区別を悪しき習慣と呼び、不平不満を訴えている。が、実際は婚姻に目を向けた話ではない。  特に、この国ーーエスペラント王国では、別の意味をもつのだ。 ーーどうしてこうなったのか。  エスペラント王国の王都にある、国内唯一の国立学院。貴族の令息令嬢だけに留まらず、平民たちにも広く門を開いている学院には様々な身分のものがいる。  ただ、国立であることもあり、学院で修める学問は専門知識のひとつ手前である。日常生活では必要ないものであるため、平民以下の身分のものは少ない。日常生活で使う母国語や簡単な計算ぐらいであれば国立学院でなくとも学べる上、学費だって三分の一にも満たない。  故に、国立学院に在籍する殆どの人間は貴族か、あるいは目的は何であれ知識を蓄えることを望んだ平民である。  在籍する貴族の中でも、ひときわ高位であるーー現在は王子殿下が二名在籍しているので、その次の地位にあたるーー者が、学院内の広い庭園にあるガゼボのベンチに腰掛けている『アドルフィーナ・ヴィンター』である。  アドルフィーナはベンチに腰掛け、図書室で借りた本を読んでいた。隣にはアドルフィーナと同じく『公爵家』の令嬢であり友人であるシェイラが、アドルフィーナよりもずっと分厚い図書を読んでいる。  『公爵家』の年頃の令嬢が二人もいるならば、本来であれば鈴の音のような声が耐えぬ、お喋りに満ちたものとなるはずだ。  けれども、ここにいるのは『北のオオカミ』と呼ばれるヴィンター家のアドルフィーナと、『東のユニコーン』と呼ばれるホルティー家のシェイラだ。それぞれ武術と魔術で名のある一族であることもあり、名よりも実をとる家柄の二人だ。  端的にいうと、和気あいあいとしたお喋りよりも、解剖学書や魔術書を広げて知識を深めることに心血を注ぐ二人である。  そんな二人は、一人であれば各々の取り巻きの令嬢たちーーと言っても高位貴族と繋がりを持つことは彼女たちに課せられた仕事でもあるーーに囲まれるが、二人でいると令嬢たちも遠慮をしてくれるので、よく二人でいる。たまに南の公爵家や西の公爵家の令息達、そして彼女達の婚約者である王子たちが姿をみせるが、滅多にない。  特に学院内の庭園にある幾つものガゼボのうち、今二人が使用しているガゼボは常日頃使用していることもあり、二人専用となりつつあるぐらいだ。  アドルフィーナが持参した小型の保温ポットの紅茶と、シェイラが持参したクッキー。それらをガゼボのテーブルに広げ、二人でまったり過ごしていた所に、突然の来訪者が現れたのだ。 「アドルフィーナ様、お話があります」  ガゼボの入口、二段程下がった地面に足をつけ、アドルフィーナに声をかけたのは見知らぬ令嬢だった。  ブリュネットの毛先を巻いた髪、ぱっちりと丸い瞳はハニーブラウン。可愛らしい印象の令嬢に、アドルフィーナは黄金の瞳を瞬かせると、向かい側に座るシェイラをちらりと見た。  その視線を受けても、シェイラは肩を竦めるだけで、あっさりとテーブルに広げた魔術書へと視線を戻す。  友人の薄情な姿に心の内でため息をつくと、アドルフィーナは手元の解剖学書を閉じた。 「ごめんなさい。お名前を伺っても?」 「エリカと申します」 「ありがとうございます。それで、エリカ様。お話とは?」  ベンチから立たず、話を促すアドルフィーナに、エリカは少し眉根を寄せた。その素直な様子に、平民の少女だろうか、とアドルフィーナは頭を巡らせる。  貴族令嬢であれば、素直に表情に出さない。そもそも、貴族の人間はーー『公爵家』よりも下位の貴族は、アドルフィーナが席を立たない姿に何か思うことはない。それが貴族の常識だからだ。 「単刀直入に申し上げます」 「どうぞ」 「ヴィルフリート様との婚約を解消してください」  ガッチャン。  甲高い音が鳴り、視線をエリカから音の原因ーーシェイラの方へ向けると、彼女は若葉色の瞳を丸くしてエリカを凝視していた。  その小さな手が、カップを持つ形であること。そして彼女の手にもテーブルの上にもカップがなく、あの音が鳴ったことを踏まえ、シェイラがカップを落としたことを察すると、アドルフィーナは視線をエリカに戻した。 「殿下との婚約について、なぜエリカ様が……?」 「私が、ヴィルフリート様の恋人だからです」  ドスンッ。  鈍い音が響き、アドルフィーナがまたしても原因であるシェイラに視線を向けると、今度は魔術書を落としたらしい。テーブルに立てかけるようにして膝の上で開いていた魔術書の姿はなく、シェイラは眉間を押さえていた。  紅茶の上に魔術書を落としてないといいけど。  シェイラの膝から落ちた魔術書の行き着く先をきっかり一秒心配した後、アドルフィーナはエリカへ視線を戻した。 「ええと。エリカ様は、ヴィルフリート殿下の恋人だから、私に殿下との婚約を解消しろ、と言っているのですよね……?」 「そうです」 「失礼ですが、エリカ様の生家は高位貴族なのですか……?」 「…………子爵です。ですが、爵位は関係ありません」  眉間に皺を寄せ、不愉快そうにアドルフィーナを睨みつけるエリカ。そんな彼女の言葉に、アドルフィーナは頭の奥がズキズキとした痛みを訴えるのを自覚した。  『愛の前に家格は無力』という、いわゆる乙女小説の身分違いの恋愛を夢見た少女なのか。あるいは、王族に取り入りたい野心家な少女なのか。  婚約者の恋人云々は置いておき、アドルフィーナはどちらなのだろうかと頭を悩ませる。  エリカの頑なな様子から、恐らく後者だろう。後者であれば、前者よりも面倒なのだ。貴族の上位下位を無視しようとする連中は、その区別の重要性を学んだ上で、思考し行動する。 「言い難いのですが、私と殿下の婚約は、『ヴィンター家』と『王族』の契約でもあります。私と殿下の意志は関係なく、私達がどうこうしようと思ってできるものでもありません」 「少ながらず反映されるはずです。アドルフィーナ様から、ヴィンター公爵に進言していただきたいのです」 「……あなた、本当に貴族の人間なの?」  エリカの言葉に、何と説明すべきか、と頭を悩ませるアドルフィーナの横から、やわらかな声が割り入る。声の割に、言葉の切れ味は鋭い。  アドルフィーナが視線を向けると、シェイラが感情を消し去った表情で、エリカを見ていた。可憐な顔立ちから表情を消すと、ひどくお人形めいたものになる。少ながらず相対する人間に圧を与えるのだが、シェイラはそのことを自覚していない。  現に、鋭い言葉を投げられ気色ばんだエリカも、圧に負けかけている。 「シェイラ」 「アルフィーは黙ってなさいな。エリカ嬢、あなた、本当に自分の言葉が通ると思っているの? それなら、あなたのお父様やお母様は、随分と貴族教育を怠って甘やかしていらっしゃるのね」 「な、」  アドルフィーナの制止も振り払い、シェイラは制服のスカートの下、黒いタイツに覆われた足を組む。小さく可憐な容姿に似合わない仕草だが、『公爵令嬢 シェイラ・ホルティー』にはひどく似合う仕草だった。  そんなシェイラを見て、アドルフィーナは小さく息をつき、視線をシェイラの向こうーー庭園の入口へと向ける。  少し目を丸くするアドルフィーナに気づくことなく、シェイラは淡々とエリカへ言葉を投げた。 「学院内では、身分は関係ないはずです……!」 「そうね、関係ないわ。だから、私たちは『下位貴族』のあなたが、私たちに声をかけても、許したじゃないの。無視をするでもなく、無礼だと怒ることもしていないわ。お名前を伺って、お話を聞いている。十分だと思うけれど?」 「ならば、今、私の家も関係ないかと思いますけれど」 「家を持ち出したのはあなたじゃない。ヴィンター家と王族の話に、首を突っ込む。社交界でなくて良かったわね。ご夫人方に爪弾きにされるわよ」 「私と! ヴィル様と! アドルフィーナ様のお話です! 家は関係なく、シェイラ様はそれ以上に関係ないかと思いますが!」 「俺の話なのか?」  甲高い声で怒鳴るエリカの言葉を切り裂くように、深みのある低い声が響く。  エリカが勢いよく視線を向け、シェイラがつまらなさそうに視線を投げる。アドルフィーナとシェイラがいるガゼボの、庭園にある小道とは反対側の入口から入ってきたのは、学院に在籍する王子二人だ。  太陽を思わせる金色の髪に、晴れ渡った青空色の瞳の青年ーーヴィルフリート王太子殿下。  星が輝く夜空を切り取った黒髪に、深い海色の瞳の青年ーールディウス第二王子殿下。  アドルフィーナとシェイラの婚約者であり、片方は渦中の人物である青年たちは、ガゼボの入口で目を瞬かせている。  話がややこしくなる、とコメカミに手を当てたのはアドルフィーナで、面倒なのが来た、と鼻を鳴らしたのはシェイラだ。  エリカは、彼女曰く『恋人』であるヴィルフリートを見ると、怒りに染まった表情を一瞬で幸福に満ちたものへと変えた。 「ヴィル様!」  そのまま石段を駆け上がり、ガゼボに足を踏み入れようとするエリカの体を、バチンっと痛々しい音を鳴らして電撃が走る。  悲鳴をあげ、庭園の小道に弾かれ、倒れるエリカに駆け寄る者はいない。エリカは痛みから、あるいは怒りから、瞳に涙をため、ガゼボの中を睨みつけた。 「な、な、何をなさるんですか!」 「控えなさい。いくら学院内といえども、殿下達に不用意に近づくものではないわ」  ガゼボの入口に、少女たちが立ち塞がる。  アドルフィーナはどこから出したのか、彼女の胸下に届く程の剣を持っている。シェイラも、同じくどこから出したのか、自身の身長よりも高い杖を手にしていた。  未だガゼボの入口はバチバチと小さく電撃が走っており、シェイラの杖の先も同じように電気を帯びていた。 「こんなこと、高位貴族だからって許されるはずが……!」 「許されます」  エリカの叫びを、静かな声が断ち切る。  剣先を地面に刺し、柄の上で両手を重ねたアドルフィーナは、声と同じく静かな表情でエリカを見下ろしていた。 「正確に言うならば『許す』『許さない』の問題ではありません。高位貴族であり、王子殿下お二人の婚約者であるの義務でも」  冬の空に浮かぶ、満月の瞳が。エリカをまっすぐに見ている。ぞわりと肌が粟立ち、体が震えるけれど、エリカはアドルフィーナから視線を逸らせなかった。 「貴女は、随分と高位下位の区別を軽んじているようだが。この国では、その区別を軽んじることは許されない」 「なん、で、」 「高位貴族のーー特に、女は。戦い、護ることが義務だからだ」 「いかなる危険からも伴侶を護る。それが、高位貴族に生まれ、高位貴族に嫁ぐ私たちの義務であり、誇りよ。騎士のように民を護るのではなく、忠誠を誓った主人を護るのではなく。私たちは、自身の伴侶を護る」  黄金の瞳が、きらりと煌めく。若葉色の瞳は、魔力の光を溢れさせていた。  二人の王子を護る彼女たちの姿を、エリカはただただ、呆然とした表情で見上げることしかできない。 「もっとも、ここは学院内だ。二人の行いは、少しばかり暗黙の了解を破っているともいえる」  ひりつくような沈黙を破ったのは、先程と同じ、低い声だ。  少女たちが視線を向けると、アドルフィーナのすぐ後ろに移動したヴィルフリートが、静かな表情でエリカを見ていた。 「ヴィルフリート様」 「剣をおさめろ、アルフィー。シェイラ嬢も、杖をしまえ」 「御意」 「浮気男に命令される筋合いはないわ」 「シェリ、落ち着いてくれ」  アドルフィーナは淡々と、シェイラはひと言言い返して、踵をひとつ鳴らす。同時に掻き消えた剣と杖を満足げに見遣り、ヴィルフリートはそれで、と話を続けた。 「ことの始まりは?」 「そこのご令嬢が、自分はヴィルフリート殿下の恋人だから婚約を解消しろってアルフィーに言ったのよ。浮気男」  シェイラの言葉に、先程とはまた違う沈黙がガゼボに広がる。ルディウスはちらりとヴィルフリートを見た後、一歩距離を置いた。さりげなく、シェイラの肩に腕を回し、自分と一緒に一歩分遠ざける。 「待て」 「兄上。いくら学院内だからといって、婚約者がいる身で……」 「待て!」 「浮気男は皆死ねばいいのに」 「待て!!」  手のひらをシェイラとルディウスに見せつけて、とりあえず二人の発言を止める。眉間に指を押し当て、考える人のポーズになった後、ヴィルフリートはエリカへと視線を向けた。  じぃ、とまっすぐにエリカを見、うん、とひとつ頷く。 「そもそも、彼女に見覚えすらないが?」 「無責任を極めたような言い訳ね」 「俺はシェイラ嬢に何かしたか??」 「紅茶と魔術書が死に絶えましたわ」  にっこり。シェイラの笑顔を見、ヴィルフリートはそろりとシェイラの視線から逃げる。  自分の婚約者であるアドルフィーナを見るが、彼女は静かに事を見守っていた。  ため息をついて、ヴィルフリートはエリカを見下ろす。ビクッとエリカの肩が跳ねた。 「悪いが、俺は貴女に見覚えはないし、恋人になった覚えもない」 「それは、」 「今ならばここにいる人間しか知らないので、不問とするが」 「……『恋人』と偽りを述べましたこと、お許しくださいませ」  エリカが地面に膝をつき、頭を垂れる。 「許す。が、二度目はないと心得よ」 「はい。……アドルフィーナ様とシェイラ様には、大変ご迷惑をおかけしました」 「お気になさらず」 「本当にね」  まったく正反対の、アドルフィーナとシェイラの言葉に小さく笑い、エリカは立ち上がる。 「ヴィルフリート王太子殿下」 「なんだ」 「殿下は覚えていらっしゃらないようですが、一度だけ、お声がけをいただいたことはあります」 「……そうだったか」 「はい。……アドルフィーナ様を大切にされたいのでしたら、ご留意くださいませ。同じ年を過ごした、女子生徒からの言葉としてお胸に留めおきください」  失礼致します。  制服姿のため、夜会で見るほどの華やかさはない。それでも、貴族の令嬢らしく優雅なカーテシーを見せつけ、エリカは踵を返した。  去りゆくなかで、彼女は一度も振り返ることはなく。ピン、と背筋を伸ばしたままだった。  その背中が庭園から見えなくなり、ようやくガゼボにいた四人は肩の力を抜いた。 「疲れた」 「そもそもの原因はヴィルフリート様でしょうが」 「兄上、優しくするのは結構ですが勘違いさせるのは如何なものかと」 「しかも忘れてるしね」 「そんなんだから勘違い製造機とか言われるんですよ??」 「そんなこと言われてるのか俺は??」 「と、いうか。ヴィーは本当に良かったのか? あれで」  二対一の図で言い合う、ルディウスとシェイラ、ヴィルフリートを遮るように、アドルフィーナがヴィルフリートへ声を掛ける。  ピシッと石になる呪いでもかけられたように固まるのがヴィルフリートで、あーあと言わんばかりに呆れた視線をヴィルフリートに投げるのがルディウスとシェイラだ。  ぎ、ぎ。油がきれたカラクリ仕掛けのようなぎこちなさで、ヴィルフリートが隣に座るアドルフィーナを見る。アドルフィーナはきょとりと目を丸くしてヴィルフリートを見つめ返した。 「アルフィー。あれ、とは……?」 「エリカ様のことだ。父上や陛下を通さずに婚約解消は流石にできないが、学院内で恋人関係になるぐらい別に……」 「待ってくれ。アルフィー、まさかとは思うが、彼女の発言を信じたのか?」 「恋人ではないのだろう?」 「もちろんだ! 俺には君がいるだろう!?」  アドルフィーナの両手を握りしめ、ヴィルフリートが必死に言い募る。  向かい側に座るルディウスとシェイラは、保温ポットから新しく紅茶を注ぎ、クッキーを食べながら観劇体勢だった。ある意味観劇よりもハラハラドキドキの舞台である。 「アドルフィーナ。俺の初恋、俺の最愛。君がいるのに、なぜ他の女と恋人になる必要がある?」 「ヴィルフリート。私の最初で最後の主よ。私は未来永劫貴方から離れることはできず、この命尽きるまで貴方の傍で牙をふるうオオカミだ。私に気をつかう必要はない」 「……うん? 俺は、君が、好きなんだが」 「…………? リップサービスは不要だが」 「リッ……!?」  面白くなってきたわね、と呟いたのはクッキーを食べる手が止まらないシェイラだ。絶句、と言うに相応しい表情のヴィルフリートに、ルディウスは可哀想なものを見る目を向けた。  遠くで、鐘が鳴る。  それを聞いて、アドルフィーナは解剖学書を手に立ち上がった。 「次は授業が入っているので、ここで失礼する」 「待っ、」 「私も授業だわ。一緒に行きましょう、アルフィー」 「二人とも気をつけてね」  魔術書を片手にアドルフィーナを追いかけるシェイラに手を振り、ルディウスは婚約者たちを見送る。  ヴィルフリートはひとり、ガゼボのテーブルで頭を抱えながら呟いた。 「どうしてこうなった……!?」 「俺としては大変面白い見世物ですよ、兄上」  庭園の小道を歩きながら、シェイラは隣を歩くアドルフィーナを見上げた。背筋をピンと伸ばし、前を見据える友は歩くだけで美しい。  じぃぃ、と見つめていると、視線に聡い彼女は困ったように笑いながらシェイラを呼んだ。 「何か言いたいことが?」 「別に? 珍しく怒ってたのね、と思っただけよ」 「怒っているわけではない」 「そうかしら」 「私がいるのに、他のご令嬢に優しくして勘違いさせるんだ。その口で私への愛を告げられても、リップサービスでしかないだろう?」  すぅ、と金の目を細めてアドルフィーナが笑う。  彼女の家の紋章が『白いオオカミ』であることを思い出させる、獣のような笑みに、シェイラもまたにっこりと花のように微笑んだ。 ーーめちゃくちゃ怒ってるじゃないのよ。  彼女のご機嫌とりに帆走することになるだろうヴィルフリートを、少しだけ哀れに思ったシェイラだった。
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