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悪魔召喚
世の中の探偵という職務はとても大変である。
企業からの依頼もあるが現代において個人からの依頼が非常に多い。浮気調査、身辺調査、連絡の取れない人の所在地調査。特に人間関係の調査が多いので、人手などいくつあっても足りない。
夫婦や恋人の浮気調査はまだいい。最近は依頼人の方が勘違いしてるイタイ奴かストーカーだったりもする。それも仕事なので引き受けるのだが。
尾行、張り込みはずっとターゲットにくっついていなければいけないのでかなりのハードワークだ。朝も夜も関係ない、体力勝負なので若いアルバイトに任せる事もある。睡眠、食事がとても不規則で夏と冬がとても辛い。
そんな中、佐藤探偵事務所には非常に優秀な助手がいた。担当業務は主に外回り、ターゲットの尾行や張り込みなど、相手に直接くっついて物事を見聞き観察するといったものだった。
どんなに不規則でもハードでも決して不平不満は言わない。何せ睡眠、食事が必要なく相手に気づかれる事が絶対にない。
彼女、遠藤一華はすでに死亡しており、幽霊なのだ。
『というわけで、今回の浮気調査は黒。出張と称して愛人の家にしけこみあんなこと、こんなことをドぎつい感じでプレイしていました。仕事は合間にパソコンでちょちょいっと仕上げて会社にも完璧に偽装してます』
すらすらと言うと、一応一華の上司にあたる中嶋がそれを調査報告に盛り込む。
「ちょちょいっと仕上げるだけの能力があるからこそそういう事できるんだろうなー、羨ましい。どうもお疲れさん」
「サトさん、もう一華ちゃんに浮気現場見てもらうのやめませんか。女子高生に見せるものじゃないですって」
平然としている一華、中嶋……名前が聡なのでサトさんと呼ばれているが、彼に訴えるのは事務作業担当の小杉だ。二十代前半の女性なので、一華に同情しているらしい。
『えー、あんなの無修正エロサイトでいくらでも見れますよ無料で。生きてた頃友達と夜中に見て大爆笑でしたよ。友達の家に泊まったらお決まりのイベントどしたけど」
「最近の若い子って」
がっくりとうな垂れる小杉を横目に、中嶋は淡々と調査報告を仕上げていく。
「小杉、お前も十分若い。そういう発言多くなると一気に老け込むぞ。あと一華、そのサイト後で教えろ」
「『死ねよ』」
一華と小杉の声が見事にハモった。
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