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斧をこちらに向けたが、思い切り中嶋の回し蹴りを喰らい斧が壁へと突き刺さる。ついでにまわし蹴り第二段を腹に喰らい壁に目出し帽の人物は吹っ飛ばされた。
中嶋の体術は探偵に必要だから覚えた、のではなく学生の頃カンフー映画にはまって真似してたら覚えたそうだ。要するにただの喧嘩技だ。
相手を蹴り飛ばした拍子に一華が中嶋から出る。除霊などにも用いられるが、肉体に大きな衝撃があると霊は肉体から出てしまう。相手を蹴り飛ばしただけだが、それでも強い感触には違いないのでカウントされたようだ。いくら憑依していても、咄嗟の事には弱い。と言っても今この状況は一華がずっと憑依している必要もないので丁度いい。
壁に叩きつけられた人物はそのまま気絶したらしくぐったりとしている。その人物はほっといて、縛られている女子高生の手足を自由にした。きつく縛られていたのか、わずかに痣になっている。やや脅えた様子だが、助けてもらった事に明らかに安堵したらしく中嶋の傍にピタリとついた。
「殺人未遂、銃刀法違反、たぶん誘拐、あとなんだ? 悪魔召喚未遂もか?」
『証拠もクソも、もう警察呼んだ方がいいんじゃないのこれ』
確かに。現行犯逮捕されれば数日は拘留される。その間に家捜しをして証拠を見つけるという手もある。ちょっとした潜入捜査が大変な事になったと携帯を取り出そうとしたが、ふと横にいた女子高生があたりを見回し始める。
「あの、これ何の音?」
耳を澄ませばパキン、パキンと何かが折れるような音がしている。わずかに温度が下がり辺りにひんやりとした空気が流れ始めた。その肌寒さに女子高生は腕をさする。そして、ズンっと床がわずかに揺れた。
はっとした中嶋が魔方陣を見る。辺りに飛び散っている血が、まるで煙のようにその魔方陣へと吸い込まれていく。
『え、何これ!?』
「おい起きろ!」
気絶している人物に往復ビンタをかまし、ガクガクと肩を激しく揺さぶる。すると三角覆面の人物は気がついたらしく、はっとして逃げようとした。しかしドガっと目の前に斧を突き刺され静止する。先ほど壁に突き刺さった斧を投げつけられたのだ、下手をしたら大怪我どころではなかった。
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