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「ごまかしたりまわりくどかったら速攻ブチ殺す。何しようとしてた、今何が起きてる!」
殺気立った声で怒鳴れば相手はビクリと肩を震わせる。しかし顔にはいまだにあの三角覆面をしているので、なんだか緊張感のカケラもないマヌケな絵にしか見えない。イライラした様子で布を無理やり引っぺがすと、案の定その顔はターゲットの女性……。
「あれ?」
ではなかった。女性ではあるが、まったくの別人だ。思わずきょとんとする中嶋は、ポツリと呟いた。
「えーっと。誰?」
「あ、アンタこそ誰!?」
『いやはやごもっとも』
「まあ誰でもいいや。この雰囲気はなんだ」
凶悪な顔で問いかければ相手はヒっと脅えた息を呑む。きょろきょろとあたりを見渡し、半泣き状態で。
「わ、わかんない」
「ああ!?」
ヤクザかチンピラのような凄み方に女は飛び跳ねる勢で肩を振るわせた。
「だって、だって私説明書読んでやっただけだし!」
「マニュアルなんてあるのかよ!? すげーな! まあどうでもいいけどな! この状況が物凄くヤバイって事だけ理解しろ! 悪魔か何か出てきて俺達全員の魂貰いますとか言ったらその場でテメエをぐちゃぐちゃにするからな!」
完全に切れている中嶋をよそに、一華はあたりを見渡す。そして机の上にある紙を見つけた。
『サトちゃん、これ説明書じゃない? 詳しい事わかれば止められるかも!』
一華の指差す方向にある紙を掴み読む。女子高生も横から覗き込んだ。
「セミテグスタンの呼び方。部屋を血まみれにして下の絵の魔方陣を描き生贄を捧げます。出てきたら願いを言うとかなえてくれます。願いをかなえれば帰ってくれます、以上」
淡々と読み上げる女子高生の無機質な声が辺りに響く。中嶋と女子高生が完全に冷たい目、というよりカワイソウな人を見る目で女を振り返る。女に霊感があれば、ここに同じような目をした一華が見えていた。
「子供チャレンジだってもうちょいマシな作文作るぞ」
「三分クッキング以下なんだけど。え、これのために私殺されそうになったとか冗談でしょ?」
「今日のみずがめ座のラッキーアイテムは壊れた鳩時計ですって言われたほうがまだマシなレベル」
「つーかこのババア蹴っていい?」
女子高生にまで侮蔑の目で見られ、女はウっと言葉を詰まらせる。恐怖とはまた違った意味で今にも泣きそうだ。
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