141人が本棚に入れています
本棚に追加
一華はやれやれと首を振ったが、ふと気づいた。
『待って、この人が殺されてないってことは儀式完成してないはずなのに何でイヤな雰囲気なの?』
「そういえば何でだ」
「え? なに?」
一華の声は聞こえていないので、中嶋の言葉しか聞いていない女子高生は不思議そうな反応をする。
「アンタが殺されてないなら、このヤバイ雰囲気は何でだ」
『そういえばさっきの魔方陣みたいなのは』
くだらないやり取りをしている間に部屋に撒き散らしていた血はすべて魔方陣に吸い込まれたようだ。きれいさっぱり跡形もなくなくなっている。
パキンという音はしない。そのかわり、地鳴りのような低い音がし始めた。その音は魔方陣から聞こえてくるのがわかる。
「ねえ、やばくない? 逃げた方がいいんじゃ」
わずかに顔を引きつらせながら女子高生が一歩後ずさる。しかしすぐにズン、ズンと大きな音が響き始める。まるで大きな何かの足音のように。中嶋は魔方陣を指差し、小声で一華に話しかける。
「ちょっと様子見てきて」
『ふざけんな』
額に青筋を浮かべ速攻一華に拒否され舌打ちをした。仕方ないとばかりに中嶋は女の胸倉を掴み怒鳴る。
「これの中止の方法は」
「え、あ、説明書に書いてないからわかんない」
その言葉にブチっと中嶋の何かが切れる。いや、先ほどから十分切れまくっているのだが。何故女というのはこう、マニュアルを理解していないうちに手を出すのか。それで何か一つ手に詰まると「わからない」「書いてない」「っていうかこれ壊れてるんじゃない?」と常に自分の非を認めず放置しようとする。
「アホかコックリさんだってお帰り頂く方法ゴロゴロしてんだぞ! 説明書の読む順番ってのはスタートアップの次は”故障かな? と思ったら”の項目だろうが!」
もはやアレがマニュアル云々以前の問題なのだが、目の前の女が本当に役に立たないことはよくわかった。掴んでいた胸倉を離す、というか床に放り投げる勢いで突き飛ばすと女は床に倒れこむ。
最初のコメントを投稿しよう!