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内心チラリと、自分達が乗り込んでこなければ儀式のようなものは成功していたのだから確かに問題なかったのかもしれないと思ったが、今完全に勢いにのまれて女はこちらを責めようとはしない。
「クソが、所長かそれともあの野郎呼ぶか!? いや時間ねえよなこれ」
『サトちゃんサトちゃん』
「どうした、なんかもう出てきそうなのか!?」
『いや、アレさ。たぶん出て来れないんじゃないかな』
「は?」
一華を見ればやや呆れた様子で魔方陣を指差している。女子高生もさっき女を見下ろしていた時のようにやや哀れむ視線を魔方陣に向けていた。
女に対して騒いでいたので気づかなかったが、音は先ほどよりも激しく鳴っている。
ドンドン、ドンドンドン、ガリガリガリ……。
激しくノックし、時にはひっかくような音。少ししては落ち着き、また激しく叩くような音がし始める。
「ウチの猫が部屋から出たいときこんな音させるわ」
女子高生がポツリと呟いた。中嶋も一華も頭の中で想像し、確かにそうかもしれないと納得した。
「要するにあれか。生贄捧げてないからこっちこれないのか」
『良かったね、そういう儀式で。魔方陣描いた時点で成立するやつとかだったら最悪だったよ』
「いざという時はそこの馬鹿を生贄にしなきゃいけないかと思った」
「ああ、その手もあった」
女子高生のセリフに関心したように親指を立てると、倒れていた女がヒっと息を呑んだようだ。
『で、どうすんのコレ』
いまだガリガリあちら側から引っ掻く音。時折グスン、とすすり泣くような音が聞こえなくもない気がしたが。音を響かせている魔方陣を指差す一華に、中嶋はニコリと笑顔を浮かべる。
「放置」
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