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ふと神棚を見れば、一華は一応神棚に拝んでいる。曰く、『変な事あってもヤだから神頼み』との事だ。そんな事を祈るより自分の成仏を祈ったほうがいいと思うが。
「以上、報告終わり。なんかやっとく事あるか」
外に出て中嶋が電話をしたのは所長の佐藤だった。佐藤はおかしな事に首をつっこみやすく、所長なのにあまり事務所にいない。電話やメールでのやり取りがほとんどだ。
今回の件、お粗末といえばお粗末なのだがどうしてもわからない点がある。
「あんな子供の遊びにもなってないようなよくわからん儀式で、本当に召喚一歩手前まで行った。逮捕前に女にどこから入手した方法かと聞いたがネットで見つけて通販みたい感じで手に入れたみたいだ。サイトを探したが見つからなかったしな」
防犯や手段がとても稚拙なのは気にならない。所詮は一般人、素人だ。しかしあの儀式だけはあまりにも完璧すぎた。生贄が捧げられていたら本当に完遂していただろう。心霊ではないので範疇外だが、それでもあの危うさはわかる。
「あ? ああ、魔方陣は一応一部消しといた。バタバタしてて本当に一部消すのがやっとだったが。アホ姉妹が帰ってきて生贄やりゃまた使えると思われても嫌だからな。説明書も処分したし、妹は詳しい絵柄覚えてないだろうから心配ない。ああ、はいはい。なんか思いついたら言ってくれ。じゃあな」
我ながら警察が来るまでの間に自分達の偽装と現場の処分をよくできたものだと思う。一華が生身なら手分けできたのだが、こればかりは仕方ない。
女が入り浸っていたサイトは検索に引っかからずわからない。巧妙に検索除けされているか、もうサイトがないか。パソコンを調べればわかったかもしれないが、警察に押収されているだろう。こちらとしてもこれ以上この件に足を突っ込む気はないが、今までにない経験だっただけに気にはなっていた。
子供の頃から霊感があり、幽霊との付き合いは長いが悪魔は未知ゾーンだ。興味があるのではない、逆だ。関わりたくないからこそ警戒したのだ。一華が「面白そうだから調べよう」と言わないよう、一応とぼけてみたが。
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