悪魔召喚

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 昔はこういう怪しいモノは何かきっかけがないと知ることもできず、調べるのにも大変だったのだが今は簡単に目に入ってしまう。見る知るだけなら誰にでも起こりうることだが、あの女に踏み込んではいけない一歩を踏み込ませたのはなんだったのか。それはきっと自分には理解できないししたくもない。  ただ、便利な反面やっかいな時代になったものだというのが最近の依頼内容からも今回の気にかかっている部分からも切に感じる。無知な人間ほど危機意識というものがまったくなく、平気で最悪な事をする。  「説明書に書いてない」という理由は一見すると馬鹿みたいだが、今はそれが当たり前に行われてしまうのだ。そんな事さえ考えない人間が多い。リスク分析をしない、先の事を考えない。未知の世界だというのに、自分には被害もリスクもないと思い込んでいる。  コンビニで食料品を買い、事務所へと戻る。まだ片付いていない案件もあるし、ここで一息入れておかなければと事務所の扉を開けた。 「くっせ!」  入った瞬間思わず叫んだ。部屋の中には酷い臭いが充満しており、それは獣臭だった。 「あ、サトさ~ん。なんかついてきちゃったみたいです」  小杉が困った様子で指差した先には犬猫が駆け回っている。ただし、全部生身ではない。動物霊だ。 「犬猫? 何で犬猫、まさかあの時のか」  怪しげな儀式の部屋の中にばら撒かれていた大量の血。部屋の隅にはたくさんの犬猫の死体があった。 『犬猫好きだけど、なんか凄い凶悪なんですけどこの子達!』  噛み付きにかかる犬を避けながら一華が叫ぶ。幽霊同士の攻撃はダイレクト、噛み付かれればそのままダメージとなる。 「いや、そりゃあヒデエ殺され方したんだから恨んでるだろうなあ人間を。わかるぞ、苦しかったし憎かったのかもしれねえなあ。でもなあ」  言いながらコンビニで買って来たものの中から1kgの塩を取り出す。事務所にあるキッチンの塩がなくなってきていたので買って来たのだ。 「ここに来るんじゃねえよクソがあああああ!!」  叫びながら、封を切って掴んだ塩を思い切り投げつける。浮遊霊や動物霊はこれで十分あの世に行く。一華はまったく効かなかったのだが。  調理に使うのではなくこういうことに使う為塩は常にkg単位で常備している。次々と浄化される動物霊を見ながら、一華は小杉を振り返る。 『綾さん掃除頑張って下さい』 「ううううう。今日やったばっかりだったのに」  塩まみれになる事務所を見てがっくりとうな垂れる。こうするしかないので仕方ないのだが、誰が掃除するかと言えば小杉だ。中嶋も掃除はするが動物霊が出た後は機嫌が悪く仕事にとりかかってしまう。  すぐに掃除しないと他の職員が帰ってきてしまう。今はたまたま誰もいないが、幽霊が見えない他の人から見れば中嶋の行動は完全に頭のおかしい人だ。仕事疲れのストレスからこんな事をした、といって通じそうだが病院に連行されそうな気もする。そんな二人の様子を見ている一華は思う。  幽霊見える人って大変だなあ、と。 ・悪魔召喚・END
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