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もちろん一華のことは調べた。住んでいた場所も家族構成も死因もすでに知っている。通り魔殺人の被害者で犯人は現在も不明のまま。家族は悲しみに暮れながらも納骨まで済ませ四十九日も終わらせている。殺されたのなら自縛霊にでもなりそうだが、本人が覚えていないのでそうならなかったようだ。実際殺害現場ではなく探偵事務所に現れている。何故この事務所に現れたのかはいまだにわからないままだ。
いるならいるで仕事してみよう、という事になり浮気現場や尾行を頼むとこれが予想以上の成果だった。写真や録音ができないのが唯一ネックだが、全てを見聞きした一華が中嶋や小杉に憑依すると彼女の記憶がそのまま見ることができる。それを元に、証拠が取れる調査を裏から仕上げ完璧な調査としてあげることができるのだ。今や一華は佐藤探偵事務所になくてはならない存在になりつつある。
「これでお前が念写できるようになったら完璧なんだけどな。見た現場の写真作り出して、『怪しい場所に小型カメラ仕込んでおいたんです』っつうことにすれば楽だ」
『一応練習はしてますけどね。まだ心霊写真の類ですよ、ノイズっぽいのもあるし他の浮遊霊写ったり。まあ心霊写真特集の雑誌とかに売ればお小遣いにはなるんじゃないですか』
一華の言葉を聞きながら先日一華がやった念写の写真を眺める。そこには男女の絡み合う写真と、その男女を覗き込んで盛り上がっている数人の浮遊霊がいた。
普通の人間が見ればただの白いもやもや、しかし霊感のある中嶋の目にははっきりと中年男性達の姿に見える。
「死んでもおっさんの考えることっつーのはみんな同じなんだな」
呆れた様子で中嶋はその写真を捨てた。
「絶対あの女です、間違いありません。こんな事するのあの女しかいないんです! でも証拠もないし」
「つまり証拠をおさえて、やめるよう説得するか警察に被害届を、ということでしょうか」
「法的措置は取るつもりです。お願いします、証拠を掴んでください!」
依頼人と中嶋が会話をしているうちに、一華は依頼人にのりうつる。霊感のない人間ならとりつかれている事に気づかれずに記憶を探ることができるのだ。
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