悪魔召喚

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 一華は一度も家族や友人のところには行っていない。行こうと思えばいつでも、一瞬で行けるのだが。行ってしまえばまた昔のように暮らしたいと願ってしまうのは間違いない。表面上は受け入れていても、まだ心の中では整理がついてないだろう。 「そういうのが自分でわかってるからいいんだよ。わかってないようなら頼まない。ま、そういう気遣いは俺じゃなくて小杉の仕事。なんやかんやで年近くて同性の小杉には懐いてるからな一華は。なんかあったら頼むわ」 「わかりました。サトさんなりに心配してるのか、めんどくさいから押し付けてるのか微妙ですけど」  やれやれといった様子で小杉はため息混じりに呟いた。ただ、中嶋の言っている事は正しいので反論することはできない。 『わああああああああああ!』 「うお!?」  突然の叫び声に中嶋が飛び跳ねる。今出かけたばかりの一華が物凄い勢いで戻ってきた。そして神棚の前にはり付く。 『観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空』 「幽霊が般若心境唱えるなよ。コエーだろ」 「っていうか一華ちゃんいつの間に般若心境を」  絶対自分が除霊されそうになった時だろうな、とは思うが。 「で、何があった」 『凄いことがあった! なんか呪いの儀式みたいのしてた! 血がどばーって!』 「嫌がらせのフルコース散々やっておきながらなんでそっちのアナログに走るんだ」  そんなものに頼るよりも先にやっている迷惑行為のほうが余程効果があると思う。 「先ほどのお話だと警察には相談したそうですし、厳重注意でもされたのでしょう。だからこっち系?」  小杉も言いながら首をやや傾ける。中嶋は思い切り半眼で「ねえよ」とつぶやく。 『とにかく! 今だったら直接乗り込んで証拠写真が撮れるよ! ゴー!』  ハリーハリー、と追い立てる一華に、小杉は困った様子で一応聞いてみる。 「簡単に言うけど不法侵入は言い訳できないよ一華ちゃん、私達は生身だし」 「何も警察みたいにドア蹴飛ばして怒鳴り込みながら入る必要ない。入ったのがバレなきゃいいんだよ。んじゃ、俺行ってくるわ」
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