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「サトさんも小杉さんのことになると妙に勘良いし、二人がくっついちゃえば一気に問題解決すると思いますけど?」
荒川の言葉に一華はブフっと吹きだす。お互いのことに鋭いのは当然一華経由で情報を知っているからなのだが、他人から見れば確かにお互いを良く知っている仲良しに見える、のかもしれない。事務所の中でも2人は一緒にいることが多く二人が会話する機会も多い。それは中嶋がこの事務所でリーダー的存在だからと言うのもあるのだが。あの二人仲良いな、と言うのが周囲からの印象だ。
しかし荒川の一言に二人はいまだかつて見たことないくらい真剣に言った。
「ない」
「はあ……そうですか」
二人同時に真剣に否定されるとは思っていなかった荒川は多少鼻白んだようだった。内心実は二人つきあってるんじゃないの、と思っていたからだ。機械屋と言ってもそこは十九歳女子、恋バナには飢えている。
『え~、ここでどっちか照れたら面白いのになあ』
そしてここにも恋バナに飢えている十六歳女子高生が面白そうに言うが、中嶋は見向きもせず手であっち行けの仕草をした。
「くだらない事言ってないで仕事戻れ、俺はもうちょい寝るから」
「は~い」
「わかりました」
事務所に戻る二人を見送り、目を爛々とさせている一華にしっしっと手を振りながら小声で言う。
「お前もはよ行け」
『綾さんナシですか? 清楚なキレイ系、可愛いとこほもあって優しいしアリじゃないですか』
「まだその話かよ、なんで女ってそういうの食いつくんだ。ねえよ、顔も性格も良いと思うが好みの問題だ」
『じゃあサトちゃんの好みってどんなの? 元奥さんは芸能人で言うと誰似でした?』
「初代妖怪人間ベムみたいな顔。もう寝るぞ」
『え? え? 初代ってどんな……っていうかベムって一番でかくてイカツイ顔した奴じゃん! せめてベラって言ってよ、本当にソレがサトちゃんの好みとかありえないでしょ! めんどくさいからっててきとーに言わないでくださいよ!』
騒いでも中嶋は無視して寝始めてしまった。一華はうーっと唸ると中嶋の携帯に近づき念写を送る。中身は確認できないが上手くいったはずだ。一枚の写真に写せる文字はせいぜい五~六文字ほどなので、数枚にわけて念じておいた。
【アヤさんと】 【アラカワさん】 【わたし】 【だったら】 【アリなの】 【だれですか】
コイバナだの好みだのが興味ない中嶋には相当ウザイに違いない。というより興味あってもこれはウザイ気がするが……起きた後に怒り出したら天井裏に逃げよう、とウキウキしながらやる事がないので小杉のところへと向かった。
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