141人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと気になったので小杉に憑依をして問いかける。
(そういえば綾さんって借金なんてしてたんですか、意外。しっかりしてそうなのに)
先ほどの中嶋との会話で言っていた事を聞いてみると、少々苦笑した感じで返事が来た。
(闇金じゃないよ、お金借りた相手は佐藤さん。一人で都心に来てお金なくてね。安定するまで生活費借りてたの)
(ふーん……)
そこで会話をやめてすぐに憑依を解いた。小杉は仕事があるし、なんとなくなのだがそのあたりはあまり突いていい話題ではないような気がしたのだ。小杉からは祖母の話……一度始まると止めても止まらない長い話しか聞いたことがなく、その他の家族の話は一度もしたことがない。いないのか、連絡をとっていないのか。いずれにしても人の家庭の事情に首を突っ込むほど無神経ではない。
このときはまだ、それだけの話だった。ただの占いサイトという認識だったのだが、それから数日後に正式な依頼として調査する事となる。
「今回は荒川、戸波さん、清水さんで動いてもらいます。パソコンやセキュリティは俺の専門外だから三人にお任しますので」
中嶋の言葉に三人は頷く。戸波は三十代男性で契約社員、清水は六十代男性でパートとして来ている。戸波はパソコンオタクというやつでパソコンに関する事情全般に詳しく、清水は定年まで勤めた会社の通信セキュリティ管理をしていたので同じくパソコンに詳しい。
今回来た依頼は四十代夫婦で、あのレボリューションというサイトをなんとか調べてもらえないかというものだった。
高校生の娘が自殺をし、その原因がそのサイトにあったのではないかという。自殺の前から様子がおかしく、何があったのか聞いても答えない。娘が死んだ後友人達に懸命に聞き込みをして調べた結果、レボリューションにハマっていて情緒不安定になっていたらしいことまではわかった。しかし友達は皆レボリューションについては口が堅く、娘の死を悲しんでいるものの詳しく話そうとせず真相を知りたいという。
娘の携帯は預かっており、履歴やメールは一切消していない。そこから一体どういうサイトなのか、何が原因で自殺したのかを調べる事にした。
三人でまず何を調べるかを相談し始めたところで中嶋は席を外す。チラリと一華を見て合図をすると一華もついてきた。向かったのは事務所が入っているビルの屋上だ。憑依させてもよかったのだが、特別な事情や状況がない限りはこうして「会話」をする事にしている。
「一応お前にも聞いておく。レボリューションについて知ってること全部教えてほしい」
『うん。まず占えるのは好きなタイプの異性で、こんな人が貴方にお似合いですっていう結果が出る。性格とかどんな事が好きかとか、芸能人で言うとこういう人って名前まで。この辺りはありがちな文章だけだったかな。ただ、こういう行動すると相手に振り向いてもらえるっていうアドバイスも載ってるんだよね』
「それだけか? 他には」
最初のコメントを投稿しよう!