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今まで依頼人と話して培ってきた経験を生かし、少し情報を整理する。人の考え方や行動の特徴からある推論を立てた。
「思い込みが激しいかどうかはひとまず置いておく。ただ、友達が死んでなお怪しいと思われるサイトに関して口を割らない理由は限定されてくる。今回の場合だと、たぶん後ろめたい事があるから隠したいのかもしれない」
『っていうと?』
「出会い系サイトとかじゃよく聞く話なんだが、本当の出会いを提供するんじゃなく最初から金を巻き上げるのが目的の偽サイトっていうのは星の数ほどある。異性のふりをしたサクラがやり取りをし続けて金を巻き上げていくっていう方法だ。結局被害者はマインドコントロールされたまま言いなりになる。でも、他人の言葉とかであっさり断ち切れるもんなんだよこういうのは」
『まあそうですよね。他人が聞いたらおかしいなって思いますし』
たとえ身近な人が指摘をしなくても、余程のお人よしでない限りはおかしいとは自分でも気づく。常に金がかかるうえ、直接会ったりそれ以上の仲に発展する事がないのだから。
「今回の場合なら金じゃなく行動だな、アドバイスに従ったんだろう。もしそれがこれってヤバイんじゃないかと思うような内容……人殺しとかじゃなく単純に軽犯罪とかだったら途中で我に返るだろ。これおかしいんじゃないか、本当にこんな事して思いが叶うのかってな」
『あ、そっか。それでもし叶わなかったら……』
「さっき一華が言った振られたから自殺ってのも当てはまる。そこに至るまでに不安や恐怖がたまってて、告白の失敗がトドメになってるとしたら違和感ない。ついでにそういうヤバそうなサイトだって気づいてた友人達の口が堅いのも事情を知ってたか、自分達も一枚噛んでる場合だな。言ったら自分たちまでしょっぴかれる対象になるから言えない。口の堅さが中途半端なのも自分達の身がヤバイっていう思いと友達の自殺の真相をなんとか告げたいっていう思いがあるから、とかか?」
『そうなると一応全部違和感なくスッキリ説明できますね。は~、サトちゃんって凄いんだ。プロファイリングとかやったら? 本当にアニメとかに出てくる探偵になれるかも』
「考えとく」
あまり興味がなさそうにそれだけ告げると中嶋は事務所へと戻った。
他人のゴタゴタに首を突っ込んで、謎を解き明かしてドヤ顔する馬鹿になど、絶対になりたくない。……他人の命の責任もとれないくせに。
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