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たまたま近くを通っていたら悲鳴を聞きつけて家に侵入した、というストーリーでいいかと一気に走り出す。悲鳴から駆けつけるまでが早すぎるが、そのへんはごまかせるだろう。
中嶋が半開きになっていたドアを思い切り蹴破る。警察だと言おうか何してるんだお前と言おうかどっちにしようかなーと迷っていると、目に飛び込んで来たのはまず血だった。部屋中血で塗りたくられたかのように壁にも天井にも血がついている。
そして中央には斧を振りかざそうとしている人物……三角形の布を頭からすっぽりとかぶり目の部分だけ丸くくり抜かれていて顔が見えないので男か女かわからないがたぶんターゲットの女性と、斧を振りかざされそうになっているのは女子高生だ。両手両足を縛られ身動きは取れそうになく、顔は恐怖に歪み涙が溢れている。よく見ると彼女の下には魔方陣のようなよくわからない円陣の絵が描かれている。
ぱっと見るなら悪魔召喚するために生贄を捧げようとしている雰囲気、普通に考えても殺人一歩手前だ。蹴破られたドアに驚き二人ともこちらを凝視して固まっている。
「『つっこみが追いつかねえよ!!』」
完全に一華と中嶋のセリフがシンクロした。憑依しているからではなく単にかぶっただけなのが奇跡といえる。
「どういう発想だよ! 何でこんな事になってんだ!」
『その魔女の帽子深くかぶりすぎちゃったみたいな覆面なに!?』
「どっから掻っ攫ってきたんだその女子高生は! 登場人物増やすなボケが!」
『オカルトってレベルじゃない! 何それ何が呼べるの!? 悪魔!? 邪神!?』
「くっせえなこの部屋、ゲロ吐きそうだろ! 血はほっとくと変な菌増えるからな! 変な伝染病かかりてえのか!」
『手足は縛って口は塞がないとか何で!?』
一華の声は全て中嶋の声としてしゃべられる。その為相手からは物凄い勢いでいろんなツッコミをされている状態だった。ポカンとしていたが、ようやく我に返り斧をこちらに向ける。
「せめて包丁か銃にしろよ凶器は!」
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