恋占い

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「じゃあ、私は銀行に行くついでに総弦さんのところに行ってきます。今回のお礼きちんとしないとどんどん性格捻じ曲がっちゃいそうなので」 『あはは、行ってらっしゃーい』  手を振って見送り、することがない一華はしばらく大人しくしていたが突然『あ』と言う。何だと思い顔を上げれば、窓の外を凝視していた。  つられて中嶋も外を見ると遠くから一人の男子高校生がじっと事務所を見ている。 「あいつがどうかしたか」 『……テル君だ』  一華の元恋人が事務所を見ている。一華が見えるのかと思ったがどうやらそうではないようだ。少し見ていたがそのままどこかに歩いていった。  しかしそのすぐ後ろから女子が一人走ってきた。すぐにその彼に追いつき、腕に自分の腕を絡めて歩き出す。 『だーかーらー! くっつくなっつーの!』  一華が悔しそうに叫び、『綾さんと一緒に総弦さんのところ行ってきます!』と怒鳴ると消えてしまった。今走ってきたのは先日も見た自分に嫌がらせなどをしていたウザイ女で、二人が一緒にいる姿など見たくない。  だから一華は気づかなかった。その場に残っていた中嶋が尋常ではない雰囲気になっている事を。驚愕の表情を浮かべ、青ざめている事を。  二人の男女が歩くその周囲には悪意の塊が満ちている。痛み、苦しみ、絶望、嘆き、憎しみ、様々な念が鬼哭(きこく)となって鳴り響く。数十メートル離れているというのに、まるで心臓を破裂寸前に鷲づかみにされたような、今にも握りつぶされそうな苦痛と威圧感があった。  中嶋にはそれを見送る事しかできない。動く事も、声を発する事も絶対にできなかった。何か物音一つ立てればアレに気づかれてしまうのではないか、という恐怖があった。  男女の姿が人ごみに消え見えなくなった頃、ようやくため息をついて椅子に座る。デスクに突っ伏し呼吸を整えた。 「……人間か……?」  一人呟いてはみるものの答えがわかるわけでもない。ただ一つ確かなのは、男か女か或いは両方なのか。いずれにせよあの場にいた者が、普通の人間ではないという事だ。  キーケースを開けてみれば、佐藤からもらっていた魔除けのキーホルダーが粉々に砕けていた。 ・恋占い・ END 幽霊と探偵 to be continued
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