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「お面はどうでしたか?あなたがお面になってしまったので、びっくりしましたよ。元に戻るには、あなたのことを大切に思っている人がお面を割らないとダメだったんですが・・・、うまくお嬢ちゃんが壊してくれましたね。」
俺はじっとおじいさんの顔を見つめた。
心なしかおじいさんの顔も浮いているような・・・まさか・・・。
「あなたはおわかりですか・・・。私も実は、お面をここで買いましてね・・・。6時間以上、つけっぱなしにしちゃったんですよ。
お祭り前夜に誰かが、私のお面を割ってくれないかと思って、毎年、出店しているんですが・・・。私の大切な人は今年も現れずじまいです。
・・・ではごきげんよう・・・・。」
佇む俺を残して、おじいさんが寂しそうに遠ざかってゆく。
後にはお太鼓の囃子の音だけが響いていた・・・。
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