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「そうですか。もし良かったら今日も販売しているんで、買ってもらってもいいですよ。」
「いや、明日、娘と妻と来ようかと思っているので。」
と言いながら、奈津子の顔が浮かぶ。キティちゃんを買えば、明日、お祭りに行く時に、奈津子が喜んで付けていくかもしれない。
初めての浴衣を着ると言っていたなぁ。
買おうかと思って、もう一度、お面を眺めた時だった。
え?
キティちゃんのお面がどこかに雲隠れしている。
代わりに、そこにあったのは・・・、
俺の亡くなった母親の顔? その隣は、中学時代のゆうすけの顔?いたずらばかりして怒られていた悪ガキ仲間! あ、初恋の洋子ちゃんも!小学校の担任の松村先生!塾の山本先生!それから、それから・・・
俺が過去に関わった人の顔がお面になって並んでいるじゃないか!
お面を凝視して声も出せない俺に、おじいさんは話しかけてきた。
「おやおや、お前さんにはそれが見えるのかい? お祭り前夜におこる七不思議のひとつなんだけどね。どうやら当たりですな。」
おじいさんは、俺に微笑みかけてきた。
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