8人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、俺の後ろを子連れのお母さんが通った。
「ママ―、ドラえもんのお面だよ!あした買ってね!」
「ええ、もちろん!パパにお願いしましょうね!」
通りすぎっていった男の子は、楽しそうに片手にリンゴ飴を握っている。微笑むお母さんは、何事もなかったかのように、手をつないで通り過ぎていった。
おじいさんは、俺の顔をまっすぐに見て話しかけてきた。
「ほらね。あなたにしか見えないんですよ・・・。せっかくなんで、どれか選ばれますか?」
選ぶって、・・・この顔を持って帰るって・・・。
「あなただけのお面ですから、他の人には、キャラクターのお面にしかみえませんよ。実は、お祭り前夜にそのお面をつけて眠るとその人との一番の思い出が見えるんですよ。」
そんなことって!
でも、母親の顔を見た瞬間に、懐かしくなってしまったのは確かだ。あんな亡くなりかたをして、後悔しているんじゃ・・・。
昔の思い出が走馬灯のように駆け巡る。
「おいくらですか?」
気が付くと俺は、おじいさんに値段を聞いていた。
最初のコメントを投稿しよう!