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「普通のお面は、800円だけど、あんたが選ぶお面には、値段がつけられるかね?好きなお面をひとつもっていくといいよ。お面をかぶって寝たら、あんたが見たい思い出がみれる。ただし、6時間たったら思い出は消えて・・」
俺は吸い寄せられるように母親のお面を手にとった。
手触りは、プラスティックで、普通のお面と変わりない。
「ダイジョウブじゃよ。他の人には、キティちゃんのお面に見えとるわい。」
神社を出た頃には、真夜中近くになっていた。さっきまで灯りがついていた屋台も豆電球のみになり、薄暗くなっている。
俺は家路を急いだ。
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家に着くと、残業で遅くなると話していたからか、明日がお祭りだからか、妻と奈津子は寝てしまったらしい。電気も消えて真っ暗だった。
普通なら、ラップのしてある夕飯を食べて、お風呂に入るところだが、今は、それどころではない。
お面の事が気になる。
しんと静まりかえった部屋の中、俺は自分の部屋に入った。
鞄の中から、お面をとりだす。間違いなく俺の母親の顔だ。シュールというよりは、なぜか、懐かしい気がする。
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