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おじいさんに言われた6時間のリミットをスマホでセットする。
そして、恐る恐る顔にかぶってみた。
その瞬間、まるで麻酔にかかったかのように、俺は意識が遠のいていくのを感じた。
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見覚えのある白いカーテンレースが見える。
俺はいつの間にか、上半身うつぶせでベッドの上でうたた寝をしていたようだ。
ベッドには、俺の母親が寝ている。一本の管が母親の細い腕に刺さっている。
窓からそよぐ風は、レースのカーテンをたなびかせてひらひらと揺れている。ベッドの上にグレーの影がいったり来たりしている。
「達也、窓を閉めておくれ。」
母親のけだるげな声が聞こえてくる。
「本当に全然、元気なのに、入院する意味があるのかい?」
俺は窓から見える公園を眺めながら、窓を閉めた。
「意味があるから入院しているんだろ。」
父親と離婚して俺を育ててくれた母親は、病気ひとつしなかった。近所のスーパーのレジ係として、フルタイムで働き、ようやく定年を迎えてゆっくりするといった時だった。
そんなある日、便秘がちだから病院に行くと勤務中の俺に連絡があった。
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